硝子体注射について

 眼科の薬剤による治療には、点眼剤や内服薬がよく使用されます。しかし、点眼剤では目の奥の病気に効果が不十分な場合や、内服薬による全身的な副作用を起こすことがあります。硝子体注射は、眼内に直接薬剤を投与することで、より強い効果と、全身的な副作用を軽減させることができます。

 当院では、抗VEGF薬を使用します。抗VEGF薬とは、VEGF(血管内皮増殖因子)の働きを抑える薬剤です。糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症などの網膜血管が詰まる病気では、通常よりも多くのVEGFが発現するため、新生血管が発生します。この新生血管が、出血や浮腫を起こし、視力低下や歪みの原因となります。

 1回の注射で治癒する場合もありますが、薬剤の効果が弱くなり、再発することがあります。半数の方は、1~3か月ごとに注射を繰り返すことになります。根気強く治療を続けて落ち着くのを待ちます。

 治療費は、高額で、3割負担の場合は、毎回4~5万円の自己負担となります。

目的別治療

1、糖尿病黄斑浮腫

●網膜にある血管の瘤(コブ)から血液成分が漏れ、それによって網膜がむくんでいます。硝子体注射を行うことで血液成分の漏れを抑制し、むくみを改善します。
 
2、加齢黄斑変性、近視性脈絡膜新生血管症
●網膜の下には脈絡膜があり、こうした病気では脈絡膜から網膜に向かって、通常ではないはずの脈絡膜新生血管が伸びていきます。硝子体注射を行うことで、新生血管を縮小させ、血液成分が漏れるのを抑制します。
 
3、網膜(静脈分枝・中心静脈)閉塞症、糖尿病網膜症
●網膜の血管が詰まるとその範囲に酸素不足が起こり、血流を回復させようと新生血管の増殖・成長が起こります。これには血管内皮増殖因子(VEGF)が関わっているとされています。VEGFは網膜の浮腫や新生血管を生じさせ、硝子体出血や血管新生緑内障を引き起こします。硝子体注射を行うことです、網膜のむくみを改善し、他の合併症の発生も抑えます。網膜(静脈分枝・中心静脈)閉塞症、糖尿病網膜症の治療では、硝子体注射と並行して網膜レーザー治療の必要があるケースも多くなっています。

 

 

なるべく早めの処置をお勧めいたします

 目に注射をするということで、抵抗感を持つ方もおられますが、注射するのは白目の部分ですし、極細の針を使用するため穴もすぐふさがりますので、ご安心ください。
雑菌が目に入らないようにするための消毒など準備に少し時間はかかりますが、治療自体はあっという間に終わります。
 網膜の病気を抱えておられる多くの患者さまが硝子体注射により改善、もしくは悪化抑制効果が見込めます。手術より気軽に受けられますし、即効性もあるため、現在では急激に全世界で広まり始めている治療法です。
 もちろん、硝子体注射治療にもデメリットはあります。効果は1~2ヶ月程度しか持続しませんし、薬価が比較的高いことは問題点だと言えます。また数千人に一人という頻度でごくまれにしか起こりませんが、注射した部分から細菌が目の中に入って感染する危険性もあります。